「美香子さん・・・実は・・・」
気まずそうな顔をして私の部屋にやってきたAさん。
「実は・・・こっそりマイクのウイスキーを飲んでしまったんです。」
「えっ!?どういうことですか!?」
「お酒がなくなって・・・どうにも我慢できなくて、最初美香子さんが料理に使ってる料理酒を飲んでみたんですが、塩っ辛くてまずくて・・・あれを飲んだら益々お酒が欲しくなって・・・つい・・・」
「えー!まさか、ひと瓶飲みほした、とかじゃないですよね!?」
「いや、そこまでは(笑)。多分(深さ)5㎝・・・いや10㎝分くらいかな」
「いやいや、5㎝か10㎝かによって、私の対応も変わってくるので、そこは正確に」
「・・・10㎝・・・かな」
「10㎝って・・・かなり本格的に飲んじゃったんですね(大汗)」
マイク・・・それは私たちと同時期に島で取材をしていたナショジオのカメラマンでした。
ナショジオの取材班やカメラマンとは、私も同じ取材地で何度か一緒に取材をしたことがあるのですが、結構曲者が多いのです。そんな曲者のお酒を日本隊が飲んだ、ということになったらどんなに大変なことになったろうか、と想像して、一瞬身震いしてしまいました。
でも、幸いなことにマイクは紳士なナイスガイ。それでも、彼も持ち込み荷物やお酒は最小限にしているはずで、貴重なお酒を飲まれたとあっては果たして心穏やかにいられるか・・・
「とりあえず、一緒にマイクのとこに行って、正直に話をして謝りましょう」と、炊飯器に残ったご飯でおにぎりをちゃちゃっと作り、Aさんを連れてマイクの部屋に行きました。
「マイク、これ差し入れ・・・それから、マイクに謝らなければいけないことがあるんだけど」
怪訝な顔で私たち2人を見るマイクに、Aさんがマイクのウイスキーを大分拝借してしまったことを伝えると、一瞬のうちに相好を崩して笑いだすマイク。
「いや、なんかね、ウイスキーが減ってる気がしたんだけど、酔っぱらってて気づかなかっただけなのかな~、とか思ってて。まさかAが、とは思わなかったよ」
笑い出したマイクに、堅い表情だったAさんもほっとしたのか、片言の英語で「お詫びになんでもするよ」と言うAさん。
「じゃ・・・そうだね・・・明日海岸に行く時に僕の三脚運んでくれたら帳消しってことで」
うわ~、やっぱり悔しいくらいナイスガイなマイク!
名刺をもらったり、今後も連絡を取り合おうと約束して別れたナショジオ関係者は何人もいたけれど、結局疎遠になってしまったパターンがほとんどな中で、マイクはその後も時々連絡を取り合う友人になったのでした。
チャンチャン。
ということでこの話は終わりにして、次回はまた別の話を。
皆さんは手料理で大人数をもてなした経験はありますか?
私は日本ではせいぜい4~5人分までの料理しか作ったことがありません。
1か月半×取材班4人分の生鮮食品を、ビジホ小型冷蔵庫に2つ分しか持っていない私が、ある時、突然に15人分のパーティー料理を作らなくてはいけなくなってしまいました。
次回はこのお話を。