前回のエピソード②から、かなり間があいてしまいました(大汗)
さて、今回は現地で急遽15人分のパーティ料理を作らなくてはならなくなり、焦りまくった料理人のお話。
これまで書いてきたように、我々がテレビ取材で訪れる離島には商店も畑もなく、電力も風力発電で限られるため、冷蔵庫もごく小型のものしか使えず、食材の殆どは、長期常温保存出来る食材で賄うしかありません。亜南極料理人としては、食材使用計画と献立は綿密にたて、途中で食料がなくなるようなことがないようにすることが使命となります。
この島の住民は島の管理人2人のみなのですが、フォークランド諸島内でも屈指の野生動物天国であるこの島には、夏季の間ペンギンや各種海鳥の調査研究のために、世界中から研究者たちがやってきます。
長期研究者が殆どなので、ほぼ毎年この島を訪れる私にとっては、その8割の研究者は顔なじみのメンバーたち。例年だと研究者はせいぜい4~5人なのですが、この年は非常に多く10人。島はいつになく賑やかでした。
取材班や研究者が研究棟で歓談していたある日、ディレクターが皆の前で突然、「今度『ジャパン・ナイト』を開催しよう。是非皆に日本食を楽しんでほしい。」と言い出しました。どうやら話題が日本食の話になり、そんな展開になったようでしたが、私としては目がテン(@_@)
やんわりと「いや~、食材が豊富にあればやりたいんだけどね~( ̄∇ ̄;)ハッハッハ」くらいで私がごまかそうとする間もなく、盛り上がる皆。
今更出来ないなんて言えない雰囲気の中で、笑顔を作りつつ、心の中でディレクターを恨めしく思う料理人(--〆)
普段から料理をする方々であれば、15人分のパーティ料理を作るのがいかに大変で、いかに大量の食材を使うか想像できると思います。
それを、1か月半×3人分の生鮮食品がビジホサイズの小型冷蔵庫2つ分しかなく、電子レンジやフードプロセッサー等はおろか、限られた調理器具しかない中で15人分を調理!?
しかも皆の出身国はイギリス・フランス・ポルトガル・ドイツ・イタリア・フォークランドと多岐にわたり、しかもそのうち2人はヴィーガン(厳格な菜食主義者)。常温保存の食材もほぼ乾燥・缶詰・インスタント食材で、野菜も長期保存のきくじゃがいも・玉ねぎ以外は、日本から持ってきた切り干し大根やネギなどの乾燥野菜しかない状況。それで皆が抵抗なく食べられるような日本食を作らなくてはいけないというのはかなりのプレッシャー(大汗)
結局どうなったかと言えば・・・
日々の仕事や撮影の合間に食料使用計画と献立を見直し、何とかパーティに使える食材をねん出し、その食材を使ってヴィーガン2人を含む多国籍ゲストが抵抗なく食べられる日本料理を考える日々が続きました。
そして当日。
「今夜はパーティがあるから撮影は午後から休んでいいよぉ~」
と涼し気に語るディレクター。
15人分の料理を作るのは、ホントにホントに大変でした。結局作ったのは、
・ちらし寿司(錦糸卵・海苔・桜でんぶ・乾燥シイタケとにんじんを煮つけた具)
・鶏唐揚げ
・親子丼(鶏少な目、玉ねぎ多め)
・やきそば(インスタント麺に玉ねぎや乾燥野菜を入れたもの)
・ポテトサラダ
・わかめの味噌汁
限られた食材で作れるもので、日本食になじみがない多国籍メンバーでも無難に食べられそうなもの、ということで必死に考えたメニューはこれでした。
幸い、皆喜んで食べてくれ、お皿も空になりました。
今振り返ればよい経験にはなりましたが、当時はホントに大変でした(大汗)。
でも、コロナ禍で人との触れ合いや海外の仲間との交流も難しくなっている今は、ビールを回し飲みして1つの大皿をつつきながら大いに盛り上がったこのような思い出は、より一層懐かしく感じます。